液晶レンズ (Liquid Crystal Lens) の研究−これまでの液晶レンズの研究について−

(内容)
  本研究所代表の佐藤進がこれまで主体的に推進してきた液晶レンズ (Liquid Crystal Lens) の研究に関連して,研究を始めた動機や研究開発の方法,種々の構造の液晶レンズの研究や特性の改善,その他について,時系列的に説明する。

液晶レンズの研究の始まり
液晶シリンダーレンズと液晶回折格子
液晶マイクロレンズ
液晶レンズの口径の拡大
液晶レンズの低電圧駆動
液晶レンズの動作と液晶の屈折率・複屈折及び液晶層の厚みとの関係
液晶レンズにおける液晶層の利用効率及びその改善法
フレネル構造による大口径の液晶レンズ
その他の液晶レンズと液晶レンズの応用

T 液晶レンズ (Liquid Crystal Lens) の研究の始まり(レンズ形状の液晶層を持つ液晶レンズ)


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U 不均一電界による分子配向効果を利用した液晶シリンダーレンズと液晶マイクロレンズ

    (3) 屈折率分布による液晶マイクロレンズ

  • 前記のシリンダー(かまぼこ型:円筒型)レンズの平行型の電極を丸くすることで,電極面に円形孔型の開口部を設けた液晶セルを作製した。この液晶セルでは,軸対称の不均一電界による液晶分子の配向効果に基づく屈折率分布が形成されるので凸レンズ効果を得ることができた(液晶マイクロレンズの論文:T.Nose and S.Sato:"Liquid-Crystal Microlens obtained with a Nonuniform Electric Field" (1989))。
  • さらに両側基板面に同一の口径の孔型開口部を形成した対称基板構造の液晶セルを作製したところ,極めて良好で収差が小さいレンズ効果を得ることができた(対称構造液晶マイクロレンズの論文:T.Nose, S.Masuda and S.Sato: "A Liquid Crystal Microlens with Hole-Patterned Electrodes on Both Substrates" (1992). )。この構造の液晶レンズにおける電界分布特性と液晶分子配向のモデルを下図に示す。また,電界による液晶分子の配向効果に基づく屈折率分布に対応した光学位相差分布特性も下図に示したが,良好な放物線(2次曲線)状の位相差分布特性となっていることが分かる。この対称構造のレンズを多数配列したレンズアレイ構造の液晶セルを使って撮影した写真も併せて示したが、このような液晶マイクロレンズアレイを使うことで,焦点の調節が可能な複眼レンズを容易に構成することができる。
  • 電界分布特性 光学位相差分布特性 液晶マイクロレンズアレイによる撮像特性の写真

  • なお,近年では青色発光ダイオード等の開発に伴い,白色発光ダイオードが照明等に広く利用されるようになってきたが,液晶マイクロレンズを多数配置した(マイクロレンズアレイ)構造では,焦点距離がきわめて短いことで入射光の集光・発散効果が生じる。最近,この効果を利用して発光ダイオードの照明光を拡散・偏向など自由にコントロールできるような機能を持つデバイスも試みられつつある。
  • このタイプの液晶レンズでは,構成要件に依存することもあるが良好なレンズ特性を得るためには,一般に基板面に形成した円形開口部の径(シリンダー型では電極の間隔)と液晶層の厚みとの間に,両側基板面に同一の開口部を形成した対称型では2〜3対1,片側にだけ開口部を形成した場合には〜5対1という条件があることが確認されている。一方,液晶層が厚くなると液晶分子の揺らぎ等に起因する白濁効果などが生じるため,液晶層の厚みは〜100μm程度が限界となる。したがって,開口部の径は数100μm程度とmm以下に制限されることになる。1mm以下の単位はマイクロメートル(μm)なので,このように開口径(幅)が小さな液晶レンズを液晶マイクロレンズと呼ぶことにした。
  • 以上のように,液晶マイクロレンズや液晶シリンダーレンズ,さらには液晶回折格子等の研究が進んだが,これらの光学デバイスではレンズ等の開口部が極めて小さいこともあって特に液晶マイクロレンズの応用は限られており,液晶レンズのレンズ径すなわち開口部を大きくすることが次の課題となった。



V 液晶レンズの口径の拡大

W 液晶レンズの低電圧駆動


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X 液晶レンズの動作と液晶の屈折率・複屈折及び液晶層の厚みとの関係

Y 液晶レンズにおける液晶層の利用効率及びその改善法

Z その他の液晶レンズ及び液晶レンズの応用

当研究所代表佐藤の主導により研究開発を行ったその他の構造の液晶レンズや液晶レンズの応用例など(一部他の研究者も含む)を以下に示す。


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